世界各国の男女平等ランキングとも呼ばれる「ジェンダー・ギャップ指数」2016年度版が、2016年10月26日(水)に世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)によって公表されました。日本は、大きく後退して過去最低の順位になってしまったことが話題になっていますが、国際的な視野から「日本の男女平等」をみてましょう。
144カ国のうち111位。過去最低ランキング
日本は、144カ国中111位で、前年度の145カ国中101位よりさらにランクがさがった形です。これは、先進7カ国G7(日本のほか、アメリカ・イギリス・カナダ・ドイツ・フランス・イタリア)にロシアを加えたG8でも、最下位。調査は4分野で評価されていますが、各分野ごとにみても、日本は、次のとおりの結果でした。
- 経済活動(ECONOMIC PARTICIPATION AND OPPORTUNITY)118位
- 教育(EDUCATIONAL ATTAINMENT)76位
- 健康と寿命(HEALTH AND SURVIVAL)40位
- 政治への関与(POLITICAL EMPOWERMENT)103位
データの活用とは難しい側面もあるもので、実は、男女の格差についての他機関の調査ではまた少し結果も異なります。ですから、総合的な意味での「男女平等」の位置づけについては冷静に判断しなければいけないところですが、細かい項目別に見ていくと、もう少し実態が見えてきそうです。
気になるのは、官民の高位職を占める女性の比率(113位)や国会議員における女性の比率(111位)、所得の男女差(100位)など、特に経済活動や政治にまつわる分野における女性の比率の低さです。政治という面では、今年の夏に発足した第3次安倍第2次改造内閣の閣僚メンバーを見ても、女性はかなり少ないです。
上位を占める北欧諸国
で総合的に上位になったのはどのような国でしょうか。ベスト5をみてみましょう。
1位アイスランド 2位フィンランド 3位ノルウェー 4位スウェーデン 5位ルワンダ
上のように、4位までは北欧諸国が占め、北欧としては5位内に入っていないデンマークも、19位に入っています。
発展途上国の躍進も
いくつかの発展途上国も20位以内にランクインしました。アフリカのルワンダは、5位に入っているほどです。
経済については、プラン・インターナショナル・ジャパンも、次のように伝えています。
〈改善の見られない日本国内の経済と政治における男女格差〉
ジェンダー・ギャップ指数の算定における経済に関する各国の指数は、労働力人口、同一労働における賃金、予想される所得、議員や管理職、専門職と技術職の5項目における男女比率をもとに割り出されます。日本は、経済分野において118位と遅れが目立っており、議員や管理職における男女比率(113位)と予想される所得の男女比率(100位)、女性の専門職と技術職の割合(101位)での改善が大きな課題です。(プラン・インターナショナル・ジャパン)
プラン・インターナショナルは、子どもの権利を推進し貧困や差別のない社会を実現するために世界70カ国以上で活動する国際NGOです。同団体は、ルワンダの経済と政治における女性進出にも、注目しています。
90年代の民族間の大虐殺から回復を遂げつつあるルワンダは、経済と政治において8位、総合指数において北欧諸国についで5位にランクインするなど、女性の社会参加、リーダーシップにおいては世界をリードするまでに達していることがわかりました。(プラン・インターナショナル・ジャパン)
ルワンダには、まだまだ教育や保険の分野、また、都市と農村部の格差拡大などに課題が残っているようです。また、民族間の戦いで大量の男性が命を落としてしまったため要職に女性が就任する比率が上がった、という指摘もあり、国際社会としても何かしらの支援や見守りが必要な段階が続くかもしれません。
しかし、日本人としては、厳しさを抱えながらも「男女平等」に関しては前進している発展途上国の動きも見られるなか、先進国でありながら目に見えた遅れをとっている日本の現状も、自覚したいところです。
世界全体で縮む健康や教育の格差。課題は経済分野
このランキングは各国を比較したものですが、世界全体の男女格差解消の動きをふまえて見ると、どうなるでしょうか。
日本は健康や教育の面では指数が高めで、これは世界全体でも格差が縮まっている部分でもあります。暮らしの中では安心で嬉しいことですが、世界全体での動向であるために、日本の順位も上位にあがりづらい一面があります。ですから、世界ランキングはけして高くはありませんが、国としてはこの調子で格差の是正も進めていけると考えられます。
しかし、一方で、世界的に進みが遅いのは、経済的な格差の解消です。なかでも下位に位置づけされる日本の問題は、やはり深刻と言えそうです。
まずは知ることから
男女平等だけを考えるのではなく、冷静に各分野全体でのバランスや質を考える目線も必要ですが、やはり、日本では、まだいわゆる「男性社会」の要素が色濃く、女性が生きづらさを感じ、それにより、個人にも社会にもひずみが生まれているという事実があるのではないでしょうか。
先日11月22日は、日本では語呂合わせで「いい夫婦の日」とされています。本メディアでも、今年、理想とされる夫婦についての記事を公開しました。一方で、この日にむけて出されたいくつかの意識調査を見ると、男女間の意識の違いが現れた結果もありました。夫が自分で考えているほど妻は夫の家事を評価していないことが示された結果などもあり、女性が負っているものの内容や、感じている不満や苦痛を男性が認識していない現状が、うかがわれます。
この男女の意識ギャップについても別の記事に書きましたが、まずは、事実を知り理解することが、解消への道でしょう。それぞれの個性を大切にしながらも、平等であるべきところの平等は実現することを、世界も視野にいれた視点をもって、考えていきたいものです。