「尾花」とは 「秋の七草」のどれ? 子どもの思考力を活かす問題の解き方

前回は、日本で古くから言われてきた「秋の七草」の覚え方をいくつかご紹介しました。今回は、その中の植物を使ったことわざと、子どもたちの思考力が育つ、アクティブな学びを進める対話や問題の“解き方”についてお届けします。子どもが「わからない」「知らない」「興味ない」と言った調子で、考えるのをやめてしまう姿に出会うことはありませんか?

ここで、問題です

秋の夜長。ぜひ、子ども達と一緒に、チャレンジしてみてください。「知識」に偏らず「思考力」も求めるテスト風の一問です。

【問題】

幽霊の正体見たり 枯れ尾花

上のことわざで、下線を引かれた尾花(オバナ)とは、何の植物のことでしょう。秋の七草である「オミナエシ、ハギ、クズ、キキョウ、フジバカマ、ススキ、ナデシコ」のうちから選びましょう。

いかがでしょうか。

 

ヒントに気づきましたか?

いわゆる、「正解が1つ」の選択問題の形をしているので、最初から知識があれば迷わず解けます。しかし、同じ「正解が1つ」の問題でも、思考力も意識された問題には、解答そのものの知識がない人でも、正解にたどりつくためのヒントがいくつか隠されていることが多いです。

問題のことわざや「尾花」という言葉について、知らないからと言って、すぐにあきらめたり、考えることをしなかったり、というのでは、もったいない話。「解けない問題」の前で、思考を止めてしまう癖が、ついてしまってはいませんか。そんな子どもたちには、楽しい雰囲気でリラックスさせてあげながら、「ヒントがあるよ?」「ヒントに気づいた?」などと声をかけて、着目点への気づきを促してあげると、興味をもって頭を働かせ始め、盛り上がるかもしれません。

「尾花」の正体を知っていて正答を出した子どもにも、「知っていればOK」とするのではなく、知っていたことや正答を出せたことを認めて褒めてあげながらも、「ねえ、この問題、答えを知らない人でも解けるしくみだね?」「もし知らなかったとしたら、ここに注目して・・・」など、推理小説を読み解くように、問題を分析しあっても面白いのではないでしょうか。

この問題に隠されたヒントというのは、たとえば、次のようなものです。

 

  • ことわざ内の言葉
  • 「尾花」という漢字
  • 「秋」という季節

幽霊の正体って!?

ことわざ内の言葉で、目につくのは、やはり「幽霊」という言葉でしょうか。

幽霊の正体見たり 枯れ尾花 (ゆうれいの しょうたいみたり かれおばな)

「見たり」という表現の理解は、難しいかもしれません。たとえば、

昨日の夜は、テレビを見たり、本を読んだりして過ごしました

というセリフで使う「見たり」とは異なった用法、意味あいの言葉です。現代の言葉にすると、「幽霊の正体を見た!・・・と思ったら、枯れた○○○だった」というようなニュアンスでしょうか。「幽霊などと騒いでも、その正体は、単なる枯れた○○○だったりするものだ。怖い怖いと思っていると、ただの○○○も幽霊に見えてしまうのだ」ということです。
ことわざが、生きるための「知恵」や「教訓」を表すものだとわかっていれば、なおさら、この「オチ」や「教え」に気づきやすいかもしれません。

しかし、それがわからなくても、「幽霊の正体」や「枯れ」という言葉から、なんとなくイメージできる植物は、ないでしょうか。

「こんなの聞いたことない!知らない!わからない!難しそう!」と思ってしまった途端に、子どもは、心を閉ざし、彼らの頭のなかの思考も止まってしまうので、そう思わせない対話問いかけが鍵になります。

「幽霊の正体」という印象的な言葉。子どもたちの大好きな(大嫌いな?)オバケの話題です! 「尾花」は植物だとわかっています。

では、「オバケの正体」と「枯れた尾花」の関係は・・・?

 

「尾花」の姿をイメージすると?

「尾花」という文字からの発想もあると、ますます、核心に近づくかもしれません。

子ども達だったら、どんな植物を想像するでしょう。「尾」は、「しっぽ」・・・?

うーん・・・「尾花」はしっぽのような花かな・・・?

(小さな子どもには、「しっぽのことだよ」と教えてあげて、語彙を増やすチャンスにしてもいいですね)

また、たとえば、「尾根」という言葉を知っている子どもは、「秋の尾根に咲く花」などと想像するかもしれません。

正答とは違った発想をしてしまうこともありますが、その経験や育まれた発想力は、その後の役に立つでしょう。

このように、漢字の意味は、言葉の理解の大きな助けになります。「オバナ」と聞くと、なじみのない言葉のように思いますが、一文字ずつ漢字に分解していくだけで、そこから発想が広がり、ヒントが得られます。

 

「秋」と言えば?

「秋」という季節も、思考の助けになるでしょう。

「秋と言えば?」と問われて、思い浮かべるものは?

秋を表す言葉や、秋恒例の行事は、たくさんあります。一緒に連想しあうと、同じものを思い浮かべるかもしれないし、別のものを連想して、へ〜、なるほど?と思うこともかもしれませんね。

 

どれか知っているものは?

そして、「秋の七草」。知らない人もいるかもしれません。

でも、詳しく知らなくても、問題文には、「オミナエシ、ハギ、クズ、キキョウ、フジバカマ、ススキ、ナデシコ」と書かれています。

この中に、なじみのある植物は、ありませんか・・・?

 

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正解は・・・!?

枯れるとオバケに見える植物・・・?

「尾花」と呼ばれる植物・・・?

秋といえば・・・?

自分の知っていることや、広げたイメージ・・・、これらのようなことをすべて考えあわせて推理しながら、もう一度、「尾花」が何かを考えてみると・・・?

 

↓↓↓正解はこちら↓↓↓

 

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動物の「尾」のような「花」をつけるので「尾花」とも呼ばれてきた、イネ科の植物「ススキ」です。「秋」の風物のひとつ「お月見」が頭に浮かび、「はっ」と気づいて、「もしかして、ススキのこと!?」と気づいた人も、いましたか。

プリント

正解:ススキ

辞書には、ことわざの意味が次のように書かれています。

幽霊かと思ってよく見ると枯れたススキの穂であった。実体を確かめてみると案外,平凡なものであるということ。

(大辞林 第三版)

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季節の文化で、アクティブラーニング

秋の七草の出典は、「万葉集」に遡るようです。

秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば  七種(ななくさ)の花 (巻八 一五三七)
萩の花 尾花 葛花(くずはな) 撫子の花 女郎花 また藤袴(ふぢばかま) 朝貌(あさがほ)の花 (巻八 一五三八)

山上 憶良(やまのうえのおくら)

「尾花」と詠まれていますね。

また、朝貌(アサガオ)」は、「キキョウ」のことだと節が有力のようです。牧野富太郎という学者によると、この時代には、今でいう「アサガオ」は日本に入ってきていなかったそうです。
山上憶良は、庶民の貧しい生活を訴えた「貧窮問答歌」でも知られています。

桔梗(キキョウ)。万葉集の時代には、「アサガオ」と呼ばれていた?

桔梗(キキョウ)。万葉集の時代には、「アサガオ」と呼ばれていた?

 

今回の問題は、国語や理科とつながります。そして、解答そのものの知識がなくても、基本的な学習知識や、普段の暮らしで身につく知恵、頭に広がるイメージ、自分の気づきを重ね合わせて思考することで、解いていける問題でした。そのような解き方をすることで思考力が育つ問題とも言えます。(ペーパーテストで出題されると、急にイキイキとした思考が止まって、解けない子どもも多いかもしれませんが・・・。)

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秋のススキが揺れる秋の夕暮れ空を、昔の人は、どんな想いで眺めていたのでしょうか

 

高等教育にアクティブラーニングが導入される時代。四季折々、小さな頃から暮らしの中で身につけた知恵や学びも、学習に活かされ、問われるような教育が、すでに始まっています。今は、この波に上手に乗って、子どもたちの豊かな育ちを実現していけるかどうかが、分かれ目とも言えそうです。

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ところで、冬が来る前に目で見て楽しむ「秋の七草」とは違い、「春の七草」は、冬を越えた年明け早々の早春に、口にいれて楽しむ「七草粥」に使われる野草です。季節の文化や暮らしを五感で楽しみながら、子どもたちと豊かな年月を重ねられるといいな、と思います。

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