夏の暑さの名残も消え涼しい風が吹いてくるころ、木々の葉も色づき、秋がやってきます。
日本では、秋に見られる美しい草花7つを「秋の七草」と称してきました。(これに対して、「春の七草」は、食べられる野草です。)
色々な覚え方で親しまれる「七草」
「秋の七草」や「春の七草」について尋ねると、「知っている」「言える」と言う多くの人は、何らかの覚え方も披露してくれます。「七草」は、日本人として伝統文化や風情を楽しむものであるだけでなく、7つを「覚えること」そのものも楽しまれ、記憶法の工夫がされてきたようです。
子ども達でも同じです。覚えたきっかけも様々で、単純に、楽しくて覚えたという小さな子ども達もいますが、学校で習ったり、中学受験のために覚えたりしたという子もいます。おじいちゃんやおばあちゃんに教えてもらったという子もいれば、ネットで見かけたという、まさに現代っ子も。
効果的と言われる記憶術には何種類かありますが、今回は、子どもとおしゃべりしながらできる、いくつかの“秋の七草”の楽しい覚え方や、関連の学びのことをお伝えします。
ちなみに、秋の七草は、次のとおりです。
【秋の七草】 女郎花(オミナエシ)、萩(ハギ)、葛(クズ)、桔梗(キキョウ)、藤袴(フジバカマ)、薄(ススキ〉、撫子(ナデシコ)
◆くりかえし唱える!
秋の七草の植物名は、ちょうどよく五七調で言える文字数なので、唱えると心地が良いです。声に出してひたすら繰り返し唱えると、自然と口をついて出るようになります。子どもたちと唱えるのも楽しいですね。
短歌を詠む調子で・・・、
ハギ・キキョウ クズ・フジバカマ オミナエシ オバナ・ナデシコ 秋の七草
別の順でも。
オミナエシ ハギ・クズ・キキョウ フジバカマ ススキ・ナデシコ 秋の七草
「秋の七草」を「これぞ七草」というのが、古くからの唱え方のようです。
◆頭文字をならべて覚える!
それぞれの頭文字をとって、
お好きな服は?
のように覚える方法も。オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギ という具合です。
ほかにも、
花好きお福
とか、
沖縄救う ※おきなわ(は) すくう(ふ)
また、
ハスキーなおふくろ (※「ろ」は何も表さずオマケ?)
というのも、人気だとか。
でも、これらの覚え方は、楽しいのですが少し難点もあって、頭文字だけ覚えても、肝心な植物名が出てこないことがあるのです。「ハってなんだっけ?」「ス・・・スイカ?あれ?(笑)」など、頭を抱えて悩み笑う子ども達の姿も、実は、よく見かけます。ただ、そのように本末転倒を笑いながら、一緒に覚え合うのも、また楽しいかもしれません。
◆歌にする!
親しみのあるメロディーにのせて、自分で歌を作ってしまう方法です。たとえば、「きらきら光る〜♪」でおなじみの「キラキラ星変奏曲」のメロディーにあわせて、「ハ〜ギ〜、ク〜ズ〜、キ〜キョ〜ウ・・・♪」・・・と、歌うのです。この方法をわざわざ教えなくても、子どもたちが、自然に、コマーシャルソングや、アニメソングにあわせて歌っていることもあります。
よく保育園や幼稚園で習う、ホンモノ?の秋の七草の歌もあります。実は、私自身も、子ども時代に保育園で覚えたこの歌をそのまま覚えています。YOUTUBEで幼児が歌う動画を見て、この歌を知ったという人もいるようです。
◆お話を作る!
植物名7つを入れ込んだ、ストーリーをつくりあげて覚える方法です。
たとえば、次のような具合です。
おはぎとくず餅のおみやげを持ち、藤色のはかまを履いて帰郷して、ススキの穂で頭をなでてシコをふんだ!
おはぎ:ハギ(萩の季節につくるからこの名がついたという言われがあります)、くず餅:クズ(根から作られるクズ粉は、実際にくず餅の素になります)、おみやげ:オミナエシ、藤色のはかま:フジバカマ(花が、藤色のハカマに似ているのでこの名だとか)、帰郷:キキョウ、ススキ:ススキ、なでてしこをふんだ:ナデシコ
日本文化や自然にふれる子ども時代の思い出を
いかがですか。気に入った覚え方、なじみの覚え方はあったでしょうか。記憶力を育てる遊びにもなるので、「秋の七草」を使って楽しく脳のトレーニングもしてみてください。今回は「記憶法」をとりあげましたが、次回は、「思考法」のことを、お伝えします!
そして、この機会に、実際の植物にも野山で触れて、秋の風情や自然のしくみの奥深さなどを感じらればば一番だと思います。普段の暮らしでももちろん、街角の花屋さん、図書館の本、家庭や学校の図鑑やパソコンなどを通して、関連の知識も一緒に集めて思考を広げながら、子ども時代の思い出をたくさん作ることも、オススメします。
子どもたちがいつか大きくなって秋風に吹かれて野の草花を見た時に、それぞれが「日本の秋」を感じながら、子どもの頃の思い出を懐かしく胸によみがえらせるのも素敵です。