今年は、ある保護者のブログに書かれた「保育園落ちた日本死ね!」という言葉が議論を生み、12月1日発表の『現代用語の基礎知識』選 2016ユーキャン新語・流行語大賞』のトップ10にも選ばれました。待機児童問題や保育士の過剰労働問題などは、今の日本社会の大きな課題のひとつと言えますが、子どもたちのいる現場を支える保育士のみなさんのからも、新しい動きが生まれているようです。
ネットで番組配信。スタートして1周年
毎月第3月曜日の夜8時〜9時。ネットをつなげば無料で見られるインターネットテレビの番組、子ども未来守り隊「保育みんなでシャベルンジャー」が、放映されています。番組では、毎回決まったテーマに沿って、会場に集まった保育士やその関係者の「出演者」それぞれが、さまざまな情報や意見を、わきあいあいとした雰囲気でトーク。番組中に、視聴者からもリアルタイムでメッセージが投稿され、その内容に番組内でも応えることができるという、参加型番組です。
昨年11月に初回放映スタートしたこの番組も、回を重ねて1年。11月21日に放映された「第13回保育みんなでシャベルンジャー」は、一周年記念として、立ち上げからの内容を振り返るプログラムでした。
保育士同士が話せる場は、意外と少ない
番組の冒頭に、主催者グループの代表で番組の進行も務める藤本奈津美さんから、この活動を始めたのは、「保育士を元気にしたい」という思いからだというお話がありました。自身も保育士である藤本さんは、以前ラジオで「世の中の保育士に元気がない」という言葉を聞いて、なんとかしたいと思ったそうです。
保育士というのは、子どもたちと触れ合える楽しくてやりがいのある仕事だけれど、大変なことも難しいことも多い職業。そして、実は、保育士と保育士が、仕事について話す機会は少ないのだそうです。
たくさんの人が、日々、悩んだり反省したりしながら、保育をしている人がいると思います。でも、保育士同士で話したり語ったりする場や仲間は、なかなか持てないんです。
番組の進行役も務める、代表の藤本奈津美さん。
保育士が元気になれば、日本も元気になる
この日の番組内でも、出演者の方々から、同じ保育園で働いていても普段の仕事が大変なことや、勤務のシフトがバラバラなことから、職場はもちろん、保育士同士が夜や休日にわざわざ会ってじっくり話す機会を作ることが難しい場合が多い、というような話も出ていました。(逆に、コミュニケーションの場が作られている保育園の実例紹介もありましたが!)。
子どもたちと話すことはあっても、保育士同士が、想いや悩みを共有したり、工夫を伝えあったりする機会が少ない。さらに、東京などの都会エリアでは、まだ、ほかの保育士に会う場があるかもしれないけれど、地方ではその機会は持ちづらい・・・、そこで、藤本さんは、「保育士が全国の保育関係者の方と繋がり、楽しく元気に保育ができる社会になったら」と考えたそうです。
保育士が、会場や家庭で、ほかの保育士の話を聞きながら、「あるある」と頷いたり、「ほかの保育士は、こんな風に考えているんだ」「こんな工夫ができるんだ」と思ったり、自分もコメントしながら参加して、語り合う保育士の仕事の楽しさとやりがいをシェアしあったり・・・。そのようにして保育士が元気になれば、保育界も日本も元気になると、藤本さんは、この活動への想いを語ってくれました。
多くの保育士、保護者、社会へ向けて、保育の大切さや楽しさを発信し、保育界を盛り上げると共に、子どもや子育てに優しい社会をつくります。
これが、この活動への想いです。
失敗を恐れず。「保育ドリプラ」の絆でチャレンジ
ユーストリームでは、無料で、簡単に映像を配信・受診することができるだけでなく、TwitterやFacebookというSNSと連携したコメント機能を使って、視聴者とリアルなコミュニケーションをとることができますし、出演者として会場からも参加してもらえます。
これなら、園や地域の垣根を越えて、全国の保育士が自宅でも出先でもスマートフォンやパソコンで気軽に番組を見られ、気軽につながることができる、と思ってスタートしました。しかし、「誰もネットに詳しいわけではなかった(笑)」。
パソコンやスマホで簡単に家から視聴。コメントを投稿することもできます。
「素人が集まって、アカウントを取得するところからのスタートでした」「でも、とにかく失敗を恐れずにやってみた」「まずは、続けようと思って1年たった」と口々に話してくれる、藤本さんをはじめとする主催者グループには、別の絆もありました。それは、「保育ドリーム プラン プレゼンテーション」という活動にも関わってきたメンバーだったことです。「ドリーム プラン プレゼンテーション」(通称「ドリプラ」)は、起業家、経営コンサルタントである福島正伸氏の発案で全国に広まっている、10分間で夢をスピーチする活動。これを、「保育」の関係者で実施してきたのが、「保育ドリーム プラン プレゼンテーション」。通称「保育ドリプラ」です。
映像制作関係者からのアドバイスがきっかけ
「テレビ番組でつながる」という案が、最初からあったわけではないものの、「何かもっと配信したい」という思いが、「保育ドリーム プラン プレゼンテーション」の活動メンバーから上がっていたと言います。
「保育園落ちた日本死ね!」などの言葉も話題になりましたが、私たちも、「保育ドリプラを続けながら、もっと別の形でも保育の現場でもつながりあいたい、社会に配信したい」と考えるようになりました。
そんな時に、映像制作に携わる知人が、たまたま映像での配信を提案してくれたところから、模索の末に、この形にいきついたそうです。はじめは、「保育ドリプラ」のドキュメントビデオの作成などを考えましたが、一方的に届けるのではなく、もっとリアルで身近な形で思いがつながるネットテレビを、配信することになりました。
会場への来場も呼びかけながら、どこからも気楽で見てほしいという思いの、この番組。毎回100人をこえる視聴者を得ているそうです。
多様なテーマを、保育士の目線で語る
この一年、番組では、保育士の仕事にまつわる様々なテーマをとりあげてきました。梅雨のような季節の遊びの工夫や、男性保育士の事情、それから、発達障がいについてなどの幅広いテーマです。そして、どれも保育士にとってはとても身近で、気になる人も多そうな、そして、そこから何らかの課題解決が生まれそうな話題に見えます。
番組では、藤本さんの進行で、わきあいあいと盛り上がりながら、出演者が、その日のテーマを語ります。共感しあったり、それぞれの立場や考えならではの発言に深々と頷いたり、驚いたり・・・。視聴者からのコメントや質問にも応えていくので、見ている方も、確かに、そんな番組会場の延長に画面の先の場にいるような気持ちになりそうです。
次回テーマは「ブラックな保育事情」!?
一周年記念番組のこの日は、出演者も多彩でした。保育園の現場で働く方はもちろん、保育園の副園長や、フリーランスの保育士、保育士時代の経験を大事にしながら国際支援に関わる人、保育士の配偶者など・・・。
「今後、どんな内容を期待するか」という問いかけには、「外国籍の子どもや両親について(言葉の壁・習慣の違いなど)」や「保育士の考える理想のパートナー」「新人保育士あるある」「保育士の育児事情」など、社会問題や、保育士個人の問題ともつながる、様々なテーマが出されていました。
そして、次回のテーマは、なんだか気になる「ブラックな保育事情・・・」(12月19日)。その後、「「保育園の三大行事」(1月16日)、「小学校の先生大集合~」(2月20日)と続きます。詳細はfacebookのイベントページで、ご紹介しています。藤本さんの司会姿が見られるのは3月まで。4月からは、2代目の司会者にバトンタッチするそうです。
番組終了後に、出演者・関係者のみなさんで、“シャベルンジャーポーズ”!
藤本さんは、今の思いをこめて、次のようなメッセージをくれました。
番組を、たくさんの人に見てほしいです。どんな人が見てくださっているか、配信する側からは見えないのですが、少しでも多くの元気が生まれたら嬉しいです。
保育関係者ではない私にとっても、保育士さんの考えや、現場の問題、そして、社会問題が、新しい視点からわかる内容だと思います。現場で子どもたちの「先生」をしている保育士さん達ならではの気づきや思いが、垣根を越えて、共有されていくのも大切で意味のあることだと感じました。また、2月には、「小学校の先生」をゲストに向かえたテーマで開催されるとのこと。「保育」の壁も越えた動きに、注目したいところです。
「配信」をメイン活動としているわけではない保育士さんたちが、プレゼンテーションをしたり、つながりながら思いを発信したりしていく動き。社会からも、共につながり応援していけるといいのではないでしょうか。
今後の予定 ◆子ども未来守り隊「保育みんなでシャベルンジャー」(ネットTV) 第14回 「ブラックな保育事情・・・」2016年12月19日 (月) 第15回 「保育園の三大行事」2017年1月16日(月) 第16回 「小学校の先生大集合~」 2017年2月20日(月) (毎月第3月曜日 20:00~21:00頃 ※変更の場合あり) ・番組サイトはこちら ・お問い合わせ:保育ドリームプランプレゼンテーション 保育の魅力発信部 mail: shaberunjer@gmail.com ◆「保育ドリーム プラン ブレセンテーション 2017」 2017年2月4日(土)13:00 - 17:00 スクエア荏原ひらつかホール ・申し込みはこちら ・facebookページはこちら 主催:保育ドリームプレゼンテーション